研究紹介

我々の研究フィールドは腎臓、内分泌、代謝、自己免疫疾患であり、その病態を理解し新たな治療戦力を構築することが我々の研究活動が目標とすべきゴールになります。

我々が取り扱う領域は、日本の医療費全体の20%を占める生活習慣病、高血圧、腎不全であり、その病態の解明と治療法の開発は、我が国にとって急務と言えます。

セリンプロテアーゼ(プロスタシン)

高脂肪食が2型糖尿病の発症に及ぼす影響については十分に解明されていません。セリンプロテアーゼのプロスタシン(PRSS8)が、Toll様受容体4(TLR4)が仲介するシグナル伝達の調整により、肝臓のインスリン感受性を調節することを我々は世界に先がけて報告しました。高脂肪食は肝細胞で小胞体ストレスを惹起しPRSS8発現を抑制することでTLR4の発現レベルを上昇させます。PRSS8はTLR4の細胞外ドメインを切断し、完全長型TLR4を減少させることでTLR4の活性化を抑制していることがわかりました。そこで肝臓特異的にPRSS8をノックアウトした(LKO)マウスを作成してみると、肝臓でTLR4蛋白の発現が増加し、LKOマウスは2型糖尿病で見られるようなインスリン抵抗性を呈しておりました。HFDマウス、LKOマウスおよび糖尿病モデルマウス(db/db)マウスでは、肝臓でのPRSS8発現を回復させると、TLR4発現レベルが低下してインスリン抵抗性が改善しておりました。これらの結果は、肝臓におけるPRSS8の新規な生理的役割を明らかにするものであり、PRSS8を用いた糖尿病の新たな治療法の開発が期待されています。

甲状腺ホルモン受容体と細胞増殖

甲状腺ホルモンは全身の新陳代謝を盛んにするホルモンで、バセドウ病や橋本病における機能異常の原因になります。そればかりか甲状腺ホルモンは全身にある甲状腺ホルモン受容体に結合し細胞核内でのDNA転写を調節し発生、恒常性、代謝など生命維持にかかわる遺伝子の転写調整を行っています。脊索動物では深海魚の体温調節、オタマジャクシからカエルへの変態、鳥の季節ごとの換羽を甲状腺ホルモン受容体は関与しています。

胎児の器官形成期の膵臓で甲状腺ホルモン受容体が高容量発現していることに着目し、糖尿病モデルマウスに対し、甲状腺ホルモン受容体を遺伝子導入することで膵β細胞の細胞増殖が誘導されることを我々は明らかにしました。

甲状腺ホルモン受容体変異マウスでは多臓器に転移する極めて悪性度の高い甲状腺癌の発癌が見られ、正常な甲状腺ホルモン受容体遺伝子を遺伝子導入することで甲状腺癌細胞の細胞増殖が抑制されておりました。未だ有効な治療法のない甲状腺未分化癌に対する治療の開発に寄与することが期待されます。

緩徐進行1型糖尿病

2型糖尿病のように見える患者さんの中には、免疫学的機序による膵β細胞障害が原因となる1型糖尿病が隠れていて、緩徐にその障害が進展することを我々は報告してきました。

1型糖尿病発症メカニズムの検討についての免疫学的機序の作用についての研究を行っています。

臨床研究

大動脈炎におけるダメージ評価アウトカムツールの作成

ANCA関連血管炎は、BVAS、VDIと確立されたアウトカムツールが存在するため様々なRCTが行われている。一方で、高安動脈炎と巨細胞性動脈炎を含む大動脈炎はいまだ確立された評価ツールがないため、臨床研究に弊害が生じている。大動脈炎はANCA関連血管炎と違い画像で評価可能である。画像所見に重みづけを行い新たなアウトカムアセスメントツールの作成を試みる。

ANCA関連血管炎における腎病理の網羅的解析

顕微鏡的多発血管炎(MPA)および多発血管炎性肉芽腫症(GPA)における腎病理の詳細を検討し、腎予後、生命予後、その他の背景との関連を調べる。

現在進行中または予定中の臨床研究

試験名 内容 方法 主幹 多施設共同
1 CARDS 大動脈炎における新たなアウトカム評価の開発 高安動脈炎、巨細胞性動脈炎のダメージ評価法の開発 後ろ向き ケンブリッジ はい
2 CARDS 日本コホートによる検証、イギリスコホートとの比較 開発されたCARDSの検証研究 後ろ向き 山梨 はい
3 ANCA関連血管炎における腎病理の網羅的解析 腎病理の詳細検討と予後、その他の因子との比較検討 後ろ向き 山梨 はい
4 ANCA関連血管炎における腎病理の治療の影響 治療前、治療後の腎病理の検討比較 前向き 山梨 はい
5 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症における血管炎再発の検討 データベースよりEGPAの再発リスク因子を探求する 後ろ向き 千葉 はい
6 メソトレキサート抵抗性の関節リウマチにおける、トファシチニブへの切り替え対トファシチニブ追加併用のオープンラベル、多施設共同、ランダム化非劣性試験 MTXにて治療不十分のRA患者において、JAK阻害薬のへの切り替え群とJAK+MTX群での治療効果比較 前向き 千葉 はい
7 新規発症ANCA関連血管炎の寛解導入療法における、リツキシマブ併用低用量グルココルチコイド対高用量グルココルチコイドのオープンラベル、多施設共同、ランダム化比較試験 低用量PSL+RTX群と高用量PSL+RTX群との比較 前向き 千葉 はい
8 インフリキシマブ投与下で寛解または低疾患活動性にある 関節リウマチ患者を対象としたインフリキシマブ休薬療法における、関節超音波を用いた再発予測精度ならびにインフリキシマブ再投与の有効性・安全性を検証する、多施設共同前向き試験 生物学的製剤を休薬後の再発リスクを関節超音波が予測できるか 前向き 千葉 はい

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